| 2008年 夏 * |
| 1 |
石楠花や 深く静かに ピアノ曲 |
| 2 |
子供の日 末娘に飯を 奢らるる |
| 3 |
還暦や 家族揃ひて 夏料理 |
| 4 |
還暦の 夢追ひ人に 若葉晴 |
| 5 |
柿若葉 窓を隔てて 語りたる |
| 6 |
六甲の 青葉若葉に 街埋む |
| 7 |
木漏れ日と 葉擦れの音と 新樹香 |
| 8 |
目瞑れば トトロ出で来る みどりの夜 |
| 9 |
新緑の 窓辺に寄りて ハーブティ |
| 10 |
好きひとに 胸一杯の 薔薇の束 |
| 11 |
美しく 老ゆるは難し 麦の秋 |
| 12 |
入梅や 老舗ホテルの 大扉 |
| 13 |
青梅や 葉陰に見ゆる 赤鳥居 |
| 14 |
葉隠れの 青き梅実の よく熟れて |
| 15 |
青梅の 熟れて願掛け 天満宮 |
| 16 |
茂れるや 水豊かなる 城ほとり |
| 17 |
梅雨催ひ 先を急がぬ 屋形船 |
| 18 |
さみだれて 彦根が城の 深き濠 |
| 19 |
五月雨や 彦根が城は 水でもつ |
| 20 |
湖の かすむ彼方も さみだるる |
| 21 |
五月雨を うけて潤ふ 湖国かな |
| 22 |
巣の上の 試飛にぎやかに 燕の子 |
| 23 |
空低く 時には高く 燕の子 |
| 24 |
大方は 飛ぶを休みて 燕の子 |
| 25 |
この国の ありやう思ふ 梅雨の夜 |
| 26 |
梅雨湿り 心の襞の 腐(くた)れたる |
| 27 |
羊蹄(ぎしぎし)や ここは日の本 島の国 |
| 28 |
半夏生 言葉信じて 騙さるる |
| 29 |
喩ふれば 濁世を笑ふ 蟇の声 |
| 30 |
かみきりの 匍匐前進 きりきり声 |
| 31 |
どくだみは 苦く十薬 甘しとも |
| 32 |
一汁に 三菜の膳 桐は実に |
| 33 |
宵涼し 良き御手前と 一礼す |
| 34 |
清水湧く 白瀧姫が ゆかりの井 「栗花落の井」にて |
| 35 |
里ぬちの 棚田幾重や 大夕焼 |
| 36 |
南国の 風渡るかに 合歓の花 |
| 37 |
合歓の花 稚児(ややこ)泣きやむ 子守唄 |
| 38 |
閑さや 闇夜にしづむ 合歓の花 |
| 39 |
天空の 気配一変 はたたがみ |
| 40 |
梅雨明けや 軒端に残る 忘れ傘 |
| 41 |
中天に 日輪の神 夏来る |
| 42 |
夏来る マリンジェットの 水飛沫 |
| 43 |
子蟷螂 腹せりあげて 威嚇せり |
| 44 |
蜘蛛の囲の 仏前仏後を 憚らず |
| 45 |
ががんぼや 嘘百回も 嘘は嘘 |
| 46 |
鬼百合や 大本営の 欺情報 |
| 47 |
忘草 人通(ひとかよ)はざれば 道潰ゆ |
| 48 |
白百合や 道なき果ての 草深野 |
| 49 |
土闇を 出でてみ空へ 蝉生る |
| 50 |
木々はみな 鬱蒼として 蝉時雨 |
| 51 |
人工島 遠く小さく 雲の峰 |
| 52 |
波止岸に 凪浪寄する 暑さかな |
| 53 |
稲妻や 人工島の ビル狭間 |
| 54 |
離陸機の 翼染めたる 夕焼かな |
| 55 |
ビアジョツキ お疲れさんと 声かけて |
| 56 |
明日がある 今日はひとまず 大昼寝 |
| 57 |
俳子庵 のらりくらりの 昼寝覚め |
| 58 |
迷箸 冷豆腐に 落着ける |
| 59 |
大西日 未読放置の 書類束 |
| 60 |
百日紅 風強き日も 雨の日も |
| 61 |
百日紅 百日たてば 紅褪する |
|
| 2008年 秋 |
| 1 |
敗戦忌 昭和の近く なりにける |
| 2 |
五色塚 秋誘引の 風立ちぬ |
| 3 |
北京五輪 終えて天下の 秋となる |
| 4 |
ちろちろち ちろろちろろと 虫鳴けり |
| 5 |
虫鳴きて 老いが寝際の 子守唄 |
| 6 |
虫の秋 すとんと落つる 眠りなか |
| 7 |
深眠り 醒むればしげき 虫の声 |
| 8 |
名月や 星稀(まれ)にして 風渡る |
| 9 |
月ありて 貧しき街の 翳蒼し |
| 10 |
憂きことは 笑ひ飛ばして 実山椒(みさんしょう) |
| 11 |
銀漢や 仰ぎて天に 愧(は)ずるなく |
| 12 |
無位無冠 無病息災 天高し |
| 13 |
見るがまま 思ふがままに 秋発句 |
| 14 |
身ほとりに 好き事多し 式部の実 |
| 15 |
花に佳趣 実に雅趣ありて 式部なる |
| 16 |
年経れば 乾く悲しみ 芙蓉の実 |
| 17 |
離陸せり あなた彼方に 鰯雲 |
| 18 |
鰯雲 群れ連なりて 鯨雲 |
| 19 |
秋白し 横丁坂の 石畳 |
| 20 |
物陰に 素秋の気配 ありにけり |
| 21 |
喉首に 皺寄る歳や 秋の風 |
| 22 |
秋の夜や 聴くも切なき 絶唱歌 |
| 23 |
秋落暉 大恐慌が やつて来る |
| 24 |
奢るたる 者に天罰 秋深し |
| 25 |
秋深し 息整へて 単座禅 |
| 26 |
店先の 巨大南瓜や ハロウィン祭 |
| 27 |
ハロウィンや 仮装悪霊 徘徊す |
| 28 |
長き夜に 荷風断腸 日記かな |
| 29 |
長き夜に 俳子断腸 俳句かな |
| 30 |
謎少し 解けしと思ふ 夜長かな |
| 31 |
椎の実を 踏むほかはなき 山路かな |
| 32 |
ゆかないで 憂ひまなこに 秋の風 |
| 33 |
秋闌けて 遊子悲しむ 須磨の寺 |
| 34 |
主待つ 広き更地や 野草の実 |
| 35 |
菊花にも 美醜の序列 あるらしく |
| 36 |
菊大輪 ためつすがめつ 品定め |
| 37 |
剪り取りて なほも気高き 菊の花 |
| 38 |
菊枕 老いて夢追ふ 人となれ |
| 39 |
おのが眼で 見ざれば暗し ぴらかんさ |
| 40 |
瑞宝寺 紅葉観音 大菩薩 |
| 41 |
紅葉狩 終えて一服 緋毛氈 |
| 42 |
茶を愛でて 目には紅葉や 瑞宝寺 |
| 43 |
照葉して 淡河石峯寺(おうご しゃくぶじ) 三重塔 |
|
| 2008年 冬 |
| 1 |
右顧左眄 上行下効 冬に入る |
| 2 |
木の葉散る 仮寓陋屋 俳子庵 |
| 3 |
木の葉散る かそけき音を 聴きにけり |
| 4 |
銀杏散る 輪廻生死を 思ふとき |
| 5 |
凩や 個の尊厳旗 千切れ飛ぶ |
| 6 |
落葉して 銀杏大樹の 枝梢 |
| 7 |
落葉みな 色つや形 異なりて |
| 8 |
落葉焚く 空には煙 地には灰 |
| 9 |
菊ほどの 品はなけれど 石蕗の花 |
| 10 |
冬めきて 行くも返すも 迷ひ道 |
| 11 |
寒天に 北極星の 不動なる |
| 12 |
霜月の 花にも色香 ありにけり |
| 13 |
小春凪 ヨットの水尾の かすかなる |
| 14 |
冬港 喫水深き 貨物船 |
| 15 |
浮寝鳥 波も立たざる 船溜 |
| 16 |
離陸機も 明石の橋も 冬夕焼 |
| 17 |
冬残照 明石が橋に 灯のともる |
| 18 |
暮早し 海の中にも 誘導灯 |
| 19 |
成道や 臘八接心 暁天坐 「禁じ手・中八」チャレンジ句 |
| 20 |
クリスマス イルミネーション 神戸かな |
| 21 |
ポインセチア 孫の乗り来る 南瓜馬車 |
| 22 |
日向ぼこ 詰みて待つたの へぼ将棋 |
| 23 |
年暮るる 見張りし人も 見張られて |
| 24 |
行き暮れて なほ道遠き 歳暮かな |
| 25 |
蓬髪を 刈れば整ふ 年用意 |
| 26 |
去年今年 魯迅先師を 敬し生く |
| 27 |
歳晩や 終り良ければ 全て良き |
|
| 2008 冬/ 春へ TOPへ 2009 /冬へ |