| 俳子俳句セレクション2008 | |
| 年足れば 顔が履歴書 実万両 | |
| 実千両 老いて定まる 幸不幸 | |
| 耐えて待ち 待ちて膨るる 冬芽かな | |
| 人肌に やさしき雨や 春隣 | |
| 春立つや たつたひとりの 夢起し | |
| かぎろいに 歪み揺れたる 街となる | |
| 卒業子 我に余生を 与へくれ | |
| 艱難も 辛苦もありて 花の道 | |
| よもすがら 降りつぐ雨に 桜蘂 | |
| 葉桜に なりて整ふ 庭の景 | |
| 春愁ふ 紫煙目にしむ ジャズ酒場 | |
| 巣の上の 試飛にぎやかに 燕の子 | |
| 夏来る マリンジェットの 水飛沫 | |
| 敗戦忌 昭和の近く なりにける | |
| 年経れば 乾く悲しみ 芙蓉の実 | |
| 秋落暉 大恐慌が やつて来る | |
| 椎の実を 踏むほかはなき 山路かな | |
| 瑞宝寺 紅葉観音 大菩薩 | |
| 冬残照 明石が橋に 灯のともる | |
| 去年今年 魯迅先師を 敬し生く | |
| 2008年 冬 | |
| 1 | 明星の 消えて山際 初茜 |
| 2 | 地の果ての 更なる涯ての 初日影 |
| 3 | 太閤を 気取りて有馬 初出湯 |
| 4 | 孫の手に 渡すものあり 老の春 |
| 5 | 魅力なき 市場なりとや 大発会 |
| 6 | 新春の 明るき空と なりにけり |
| 7 | 年足れば 顔が履歴書 実万両 |
| 8 | 実千両 老いて定まる 幸不幸 |
| 9 | 冬日和 周遊船は 帆を立てず |
| 10 | 冬曙 涙に滲む 追悼火 |
| 11 | それぞれに ひとつの命 震災忌 |
| 12 | 冬地震の 日より書捨つる 人となる |
| 13 | 冬夕焼 明日には明日の 風が吹く |
| 14 | 底冷えて 街薄明の 深しじま |
| 15 | 大寒や 心重たく なりにける |
| 16 | 春を待つ 両手裏(りょうたなうら)を 握り締め |
| 17 | 六甲の 表は霙 裏は雪 |
| 18 | 神戸とて 奥六甲は 瀧凍つる |
| 19 | 雪晴れて 明るき空と なりにけり |
| 20 | 雪掻の 済みたる路地と まだの路地 |
| 21 | 山里に 低き空あり 冬ざるる |
| 22 | 耐えて待ち 待ちて膨るる 冬芽かな |
| 23 | 日脚伸ぶ 外遊びの子ら をらざれど |
| 24 | 人肌に やさしき雨や 春隣 |
| 25 | 春隣 釈尊大悲 おもふとき |
| 2008年 春 | |
| 1 | 春立つや たつたひとりの 夢起し |
| 2 | 春浅し 余白埋まらぬ 俳句帖 |
| 3 | 日当たりて 黒板塀の 春めける |
| 4 | 早春や 六甲の木々 蘇る |
| 5 | 山里の 春呼ぶ雨と なりにけり |
| 6 | しぶき飛ぶ いかなご網の 二艘曳 |
| 7 | 春陽や 橋の袂の 陰淡し |
| 8 | 春風の ますぐに抜ける 曲がり道 |
| 9 | 外に出でて 春本番を 疑はず |
| 10 | 春なれや 野山駈けしを 懐かしむ |
| 11 | 春霞 六甲山の 見ゆる街 |
| 12 | 春の夜に 兵庫津の道 無常風 |
| 13 | 奢るるも 猛しも滅ぶ 春の夜 |
| 14 | 絹糸の 縺るるごとき 春の夢 |
| 15 | 卒業子 我に余生を 与へくれ |
| 16 | 待ちわびて 花はまだかと 訪ね来し |
| 17 | 初花の 恥ぢらふやうに 咲きにけり |
| 18 | 外に出でて わが世の春の 謳歌人 |
| 19 | 気骨ある 人はいづこや 木瓜の花 |
| 20 | 桜咲く 俳子生涯 一書生 |
| 21 | 艱難も 辛苦もありて 花の道 |
| 22 | 馴初めの 袖ふれあふも 春が宵 |
| 23 | 紅乙女(こうおとめ) 有楽永楽 椿咲く |
| 24 | 同種でも 柄を違へて 花椿 |
| 25 | 色褪せて なほも散らざる 椿かな |
| 26 | 紫木蓮 通るも細き 禅の道 |
| 27 | 白木蓮 黄ばみ汚れて 散りにける |
| 28 | かぎろいに 歪み揺れたる 街となる |
| 29 | 騒めきて あち見こち見の 花見客 |
| 30 | さくらさくら さくらのはなの ちりぬるを |
| 31 | よもすがら 降りつぐ雨に 桜蘂 |
| 32 | 葉桜に なりて整ふ 庭の景 |
| 33 | 六甲の 春は曙 柔き風 |
| 34 | 春宴(はるうたげ) 面輪さびしき 歌うたひ |
| 35 | 春愁ふ 紫煙目にしむ ジャズ酒場 |
| 36 | 春浪や 醒めざる夢を 見るごとく |
| 37 | 春深し サイト開局 五周年 |
| 38 | 春惜しむ 間もなく春の 終りけり |
| 2008年 夏 | |
| 1 | 石楠花や 深く静かに ピアノ曲 |
| 2 | 子供の日 末娘に飯を 奢らるる |
| 3 | 還暦や 家族揃ひて 夏料理 |
| 4 | 還暦の 夢追ひ人に 若葉晴 |
| 5 | 柿若葉 窓を隔てて 語りたる |
| 6 | 六甲の 青葉若葉に 街埋む |
| 7 | 木漏れ日と 葉擦れの音と 新樹香 |
| 8 | 目瞑れば トトロ出で来る みどりの夜 |
| 9 | 新緑の 窓辺に寄りて ハーブティ |
| 10 | 好きひとに 胸一杯の 薔薇の束 |
| 11 | 美しく 老ゆるは難し 麦の秋 |
| 12 | 入梅や 老舗ホテルの 大扉 |
| 13 | 青梅や 葉陰に見ゆる 赤鳥居 |
| 14 | 葉隠れの 青き梅実の よく熟れて |
| 15 | 青梅の 熟れて願掛け 天満宮 |
| 16 | 茂れるや 水豊かなる 城ほとり |
| 17 | 梅雨催ひ 先を急がぬ 屋形船 |
| 18 | さみだれて 彦根が城の 深き濠 |
| 19 | 五月雨や 彦根が城は 水でもつ |
| 20 | 湖の かすむ彼方も さみだるる |
| 21 | 五月雨を うけて潤ふ 湖国かな |
| 22 | 巣の上の 試飛にぎやかに 燕の子 |
| 23 | 空低く 時には高く 燕の子 |
| 24 | 大方は 飛ぶを休みて 燕の子 |
| 25 | この国の ありやう思ふ 梅雨の夜 |
| 26 | 梅雨湿り 心の襞の 腐(くた)れたる |
| 27 | 羊蹄(ぎしぎし)や ここは日の本 島の国 |
| 28 | 半夏生 言葉信じて 騙さるる |
| 29 | 喩ふれば 濁世を笑ふ 蟇の声 |
| 30 | かみきりの 匍匐前進 きりきり声 |
| 31 | どくだみは 苦く十薬 甘しとも |
| 32 | 一汁に 三菜の膳 桐は実に |
| 33 | 宵涼し 良き御手前と 一礼す |
| 34 | 清水湧く 白瀧姫が ゆかりの井 「栗花落の井」にて |
| 35 | 里ぬちの 棚田幾重や 大夕焼 |
| 36 | 南国の 風渡るかに 合歓の花 |
| 37 | 合歓の花 稚児(ややこ)泣きやむ 子守唄 |
| 38 | 閑さや 闇夜にしづむ 合歓の花 |
| 39 | 天空の 気配一変 はたたがみ |
| 40 | 梅雨明けや 軒端に残る 忘れ傘 |
| 41 | 中天に 日輪の神 夏来る |
| 42 | 夏来る マリンジェットの 水飛沫 |
| 43 | 子蟷螂 腹せりあげて 威嚇せり |
| 44 | 蜘蛛の囲の 仏前仏後を 憚らず |
| 45 | ががんぼや 嘘百回も 嘘は嘘 |
| 46 | 鬼百合や 大本営の 欺情報 |
| 47 | 忘草 人通(ひとかよ)はざれば 道潰ゆ |
| 48 | 白百合や 道なき果ての 草深野 |
| 49 | 土闇を 出でてみ空へ 蝉生る |
| 50 | 木々はみな 鬱蒼として 蝉時雨 |
| 51 | 人工島 遠く小さく 雲の峰 |
| 52 | 波止岸に 凪浪寄する 暑さかな |
| 53 | 稲妻や 人工島の ビル狭間 |
| 54 | 離陸機の 翼染めたる 夕焼かな |
| 55 | 明日がある 今日はひとまず 大昼寝 |
| 56 | 俳子庵 のらりくらりの 昼寝覚め |
| 57 | 迷箸 冷豆腐に 落着ける |
| 58 | 大西日 未読放置の 書類束 |
| 59 | 百日紅 風強き日も 雨の日も |
| 60 | 百日紅 百日たてば 紅褪する |
| 2008年 秋 | |
| 1 | 敗戦忌 昭和の近く なりにける |
| 2 | 五色塚 秋誘引の 風立ちぬ |
| 3 | 北京五輪 終えて天下の 秋となる |
| 4 | ちろちろち ちろろちろろと 虫鳴けり |
| 5 | 虫鳴きて 老いが寝際の 子守唄 |
| 6 | 虫の秋 すとんと落つる 眠りなか |
| 7 | 深眠り 醒むればしげき 虫の声 |
| 8 | 名月や 星稀(まれ)にして 風渡る |
| 9 | 月ありて 貧しき街の 翳蒼し |
| 10 | 憂きことは 笑ひ飛ばして 実山椒(みさんしょう) |
| 11 | 銀漢や 仰ぎて天に 愧(は)ずるなく |
| 12 | 無位無冠 無病息災 天高し |
| 13 | 見るがまま 思ふがままに 秋発句 |
| 14 | 身ほとりに 好き事多し 式部の実 |
| 15 | 花に佳趣 実に雅趣ありて 式部なる |
| 16 | 年経れば 乾く悲しみ 芙蓉の実 |
| 17 | 離陸せり あなた彼方に 鰯雲 |
| 18 | 鰯雲 群れ連なりて 鯨雲 |
| 19 | 秋白し 横丁坂の 石畳 |
| 20 | 物陰に 素秋の気配 ありにけり |
| 21 | 喉首に 皺寄る歳や 秋の風 |
| 22 | 秋の夜や 聴くも切なき 絶唱歌 |
| 23 | 秋落暉 大恐慌が やつて来る |
| 24 | 奢るたる 者に天罰 秋深し |
| 25 | 秋深し 息整へて 単座禅 |
| 26 | 店先の 巨大南瓜や ハロウィン祭 |
| 27 | ハロウィンや 仮装悪霊 徘徊す |
| 28 | 長き夜に 荷風断腸 日記かな |
| 29 | 長き夜に 俳子断腸 俳句かな |
| 30 | 謎少し 解けしと思ふ 夜長かな |
| 31 | 椎の実を 踏むほかはなき 山路かな |
| 32 | 秋闌けて 遊子悲しむ 須磨の寺 |
| 33 | 主待つ 広き更地や 野草の実 |
| 34 | 菊花にも 美醜の序列 あるらしく |
| 35 | 菊大輪 ためつすがめつ 品定め |
| 36 | 剪り取りて なほも気高き 菊の花 |
| 37 | 菊枕 老いて夢追ふ 人となれ |
| 38 | おのが眼で 見ざれば暗し ぴらかんさ |
| 39 | 茶を愛でて 目には紅葉や 瑞宝寺 |
| 40 | 瑞宝寺 紅葉観音 大菩薩 |
| 41 | 照葉して 淡河石峯寺(おうご しゃくぶじ) 三重塔 |
| 42 | 木の葉散る 仮寓陋屋 俳子庵 |
| 43 | 木の葉散る かそけき音を 聴きにけり |
| 44 | 銀杏散る 輪廻生死を 思ふとき |
| 2008年 冬 | |
| 1 | 菊ほどの 品はなけれど 石蕗の花 |
| 2 | 右顧左眄 上行下効 冬に入る |
| 3 | 凩や 個の尊厳旗 千切れ飛ぶ |
| 4 | 冬めきて 行くも返すも 迷ひ道 |
| 5 | 寒天に 北極星の 不動なる |
| 6 | 霜月の 花にも色香 ありにけり |
| 7 | 小春凪 ヨットの水尾の かすかなる |
| 8 | 冬港 喫水深き 貨物船 |
| 9 | 浮寝鳥 波も立たざる 船溜 |
| 10 | 離陸機も 明石の橋も 冬夕焼 |
| 11 | 冬残照 明石が橋に 灯のともる |
| 12 | 暮早し 海の中にも 誘導灯 |
| 13 | 落葉して 銀杏大樹の 枝梢 |
| 14 | 落葉みな 色つや形 異なりて |
| 15 | 落葉焚く 空には煙 地には灰 |
| 16 | 成道や 臘八接心 暁天坐 「禁じ手・中八」チャレンジ句 |
| 17 | クリスマス イルミネーション 神戸かな |
| 18 | ポインセチア 孫の乗り来る 南瓜馬車 |
| 19 | 日向ぼこ 詰みて待つたの へぼ将棋 |
| 20 | 年暮るる 見張りし人も 見張られて |
| 21 | 行き暮れて なほ道遠き 歳暮かな |
| 22 | 蓬髪を 刈れば整ふ 年用意 |
| 23 | 去年今年 魯迅先師を 敬し生く |
| 24 | 歳晩や 終り良ければ 全て良き |