| 俳子俳句セレクション2009 | |
| 竜の玉 家運隆起を 疑はず | |
| 年長けて また越えゆかむ 寒深山 | |
| 海峡の 波尖りくる 二月かな | |
| 網引の いかなご撥ねて 桜色 | |
| 真盛りの うすくれなゐの 花の下 | |
| 君とゐる ただそれだけの 花の宴 | |
| どこ行くも 爺がしんがり 子供の日 | |
| 会ふときは 薔薇一輪を 胸に抱き | |
| 清盛が 都の跡や 青葉騒 | |
| 干乾びし 亡骸ひとつ 夏終わる | |
| 歌姫の 柳眉愁声 秋深し | |
| 咲くもあり 実るもありて 野辺の秋 | |
| 斑かに 冬毛生え初む 鴎かな | |
| 時雨るるや 摂津播磨の 国境 | |
| 寒昴 平山郁夫 先師逝く | |
| 冬夕焼 ふるさと遠く なりにける | |
| 2009年 冬 | |
| 1 | 杉玉に 結びて祈る 初みくじ |
| 2 | 淑気満つ 老舗ホテルの 古調度 |
| 3 | 垂水路に 天地人あり 明の春 |
| 4 | 竜の玉 家運隆起を 疑はず |
| 5 | めでたしよ 雀寄り来る 注連飾 |
| 6 | 日翳りて 冬海峡の騒めける |
| 7 | 空色を 映して暗き 冬の海 |
| 8 | 冬の海 沖放く(おきさく)船の 遅々として |
| 9 | 冬月や 命果てたる 朝まだき |
| 10 | 震災忌 無念の思ひ 今もなほ |
| 11 | 寒夕焼 亡き輩は もの言はず |
| 12 | 小雀の 宿となりたる 冬木立 |
| 13 | 素寒貧 群るるほかなき 寒雀 |
| 14 | 酔へばまた 悲憤慷慨 鮟鱇鍋 |
| 15 | 青木の実 年経て失せし 羞恥心 |
| 16 | 寒月や 呪はれ塚の ある里曲 |
| 17 | 寒月下 竹林白く 浮かび出づ |
| 18 | 寒三日月 朔太郎猫 目を病みて |
| 19 | 帰りゆく ところなきかに 寒の猫 |
| 20 | 冬銀河 人知及ばぬ こと多し |
| 21 | 寒北斗 知を敬ひて 生きめやも |
| 22 | なにくれと 語り合はせて 懐手 |
| 23 | しばらくは 俳子仮寓の 冬籠 |
| 24 | 目ざむるや 窓辺明るき 雪の朝 |
| 25 | 冬木立 日は輝きを 失はず |
| 26 | 冬木立 虚飾なければ 素にして剛 |
| 27 | 年長けて また越えゆかむ 寒深山 |
| 28 | 日脚伸ぶ 茜明かりに 街染まる |
| 29 | 紅冬至 雲龍梅の 紅と白 |
| 30 | 山里に 五風十雨 冬ぬくし |
| 31 | 雨降りて 柔らかき土 春近し |
| 2009年 春 | |
| 1 | 春立つや 起死回生の 一秘策 |
| 2 | 海峡の 波尖りくる 二月かな |
| 3 | 春浅し 海光いまだ 整はず |
| 4 | 流氷を 枕に胡獱(とど)の 欠伸かな テレビで見て |
| 5 | 春めきて 句心いとど ときめける |
| 6 | 春一番 孫より届く チョコレート |
| 7 | 神戸より 春の便りを 新潟へ |
| 8 | ひと夢に ふたつの慶事 梅三輪 |
| 9 | 残り香の あるかなきかに 梅のひと |
| 10 | 網引の いかなご撥ねて 桜色 |
| 11 | 遠きにも いかなご船の 大漁旗 |
| 12 | 早春や レトロモダンの 似合ふ街 |
| 13 | 白梅や 梢に残る 風の韻 |
| 14 | 陽炎や いにしへ人の 眠る墳(はか) |
| 15 | 春霞 遠嶺が先に 瀬戸の海 |
| 16 | 六甲の 山端にのそり 春の月 |
| 17 | 汚れちまった 中也の悲哀 辛夷散る |
| 18 | 春の夜や ピアノ奏でる 白き指 |
| 19 | 酒に酔ひ ジャズにも酔ひて 夜半の春 |
| 20 | 真盛りの うすくれなゐの 花の下 |
| 21 | 君とゐる ただそれだけの 花の宴 |
| 22 | 人の世は 移れど須磨の 宵桜 |
| 23 | 遠来の 友去りてより 花に雨 |
| 24 | 花散りて あとにねね橋 太閤橋 |
| 25 | 花散るを 心静かに 眺めけり |
| 26 | 高階の 最上階に 花の屑 |
| 27 | 産土の 花は咲くらむ わが死後も |
| 28 | 梅に似て 更にあでやか 花しどみ |
| 29 | 花樝子(はなしどみ) 笑み絶やさざる 孫娘 |
| 30 | 満ち足りて こぼるる笑みや 桃の花 |
| 31 | 桃咲きて 俄か華やぐ 裏通り |
| 32 | 花杏 風に流るる おさげ髪 |
| 33 | 落椿 小舟のやうに 流さるる |
| 34 | 東の 春まゆ月の 明けの空 |
| 35 | 天空を 横に流れて 春の雷 |
| 36 | 古池や ドレミファソラシ 泥蛙 |
| 37 | 春昼や 太公望の 長き竿 |
| 38 | 春憂や サックス吹きの 眉間皺 |
| 39 | 春愁も やがて楽しき ジャズの夜 |
| 2009年 夏 | |
| 1 | 楠若葉 灘酒蔵の 白き壁 |
| 2 | どこ行くも 爺がしんがり 子供の日 |
| 3 | 目に見えぬ 天網見ゆる 五月かな |
| 4 | 静かなる 時の贅あり 若葉宿 |
| 5 | 頬杖を 解かざるままに 窓若葉 |
| 6 | これもまあ 一期一会か 新茶飲む |
| 7 | 木漏れ日を うれしと思ふ 薄暑かな |
| 8 | 会ふときは 薔薇一輪を 胸に抱き |
| 9 | 風涼し 津の国生田 滝の道 |
| 10 | 歌碑いくつ 薄日もれくる 五月闇 |
| 11 | 着古しを また取り出して 更衣 |
| 12 | 顎なでて 脱皮完了 更衣 |
| 13 | 清盛が 都の跡や 青葉騒 |
| 14 | 立葵 万騎といへど 武者一騎 |
| 15 | 夏草や 義経主従 七十騎 |
| 16 | 夏烏 つはものどもの 跡もなく |
| 17 | おぼつかな 年経るごとの 捩の花 |
| 18 | 青梅雨や 義経駈けし 鹿の道 |
| 19 | 荒梅雨や 豊国稲荷 神社坂 |
| 20 | 梅雨晴や 平家武者の 列が行く |
| 21 | 梅雨晴れて 公達衣装 艶やかに |
| 22 | 天と地の あはひ巡りて 緑雨なる |
| 23 | 睡蓮や 池面に浮かぶ 鯉の口 |
| 24 | 布袋草 デラシネなるを よしとせり |
| 25 | 後はただ 萎るるだけの 白き薔薇 |
| 26 | 明易し ひときは高き 明の星 |
| 27 | 明易し 大地目覚むる 刻来る |
| 28 | 膳涼し 昔ながらの 町家茶屋 |
| 29 | 緑蔭や 日の斑わづかに 揺らめける |
| 30 | 朝日影 紅もほのかに 未敷蓮華(みふれんげ) |
| 31 | 掛け声も どこか幼き 神輿かな |
| 32 | 無動寺の 長き参道 油照 |
| 33 | お疲れさん 拳固で拭ふ 顔の汗 |
| 34 | 帰るぞと ふりさき見れば 雲の峰 |
| 35 | 六甲に 意気衝天の 雲の峰 |
| 36 | 山里や 雨降りやめば 蝉時雨 |
| 37 | 蝉時雨 里行く人の 影もなく |
| 38 | 夏座敷 孫も真似する 大胡坐 |
| 39 | 舟虫や 垂水が浜の 舫ひ舟 |
| 40 | 殺生も むべなるかなと 藪蚊打つ |
| 41 | 干乾びし 亡骸ひとつ 夏終わる |
| 2009年 秋 | |
| 1 | 多雨多湿 豪雨洪水 秋立ちぬ |
| 2 | 里の木々 青々として 敗戦日 |
| 3 | 現し世と 来世のあはひ 盆踊る |
| 4 | 六甲の 山姿やさしき 初秋かな |
| 5 | 退くも 転ずるもなき 秋来たる |
| 6 | 星月夜 み空に花の 咲くといふ |
| 7 | わが胸の 思ひ遥かに 星月夜 |
| 8 | 須磨浦の 向かいは淡路 秋澄めり |
| 9 | ありがたう 声掛け過ぐる 稲穂道 |
| 10 | 上りあり 下りもありて 秋の雲 |
| 11 | 秋の蜘蛛 日に腹向けて 囲の中に |
| 12 | 秋蝶の 花にとまりて 動かざる |
| 13 | 知らざるを 知りて今宵も 秋燈下 |
| 14 | 秋燈 味読読破の 書を照らす |
| 15 | 秋一ト日 男ひとりの 旅もいい |
| 16 | 秋爽や ジャズパレードの 通る街 |
| 17 | 歌姫の 柳眉愁声 秋深し |
| 18 | 秋深し 隣もジャズを 愛ずる人 |
| 19 | 酔ふほどに 神戸北野の 良夜なる |
| 20 | 秋ジャズの 余韻にひたる 宴あと |
| 21 | なんとなく 街ゆく人に 秋の風 |
| 22 | 秋落暉 先を見ぬ国 読まぬ国 |
| 23 | 咲くもあり 実るもありて 野辺の秋 |
| 24 | わけ入りて いづこともなき 秋の暮 |
| 25 | 野に熟れて 野に落ち果てて 樝子(しどみ)の実 |
| 26 | 樝子の実 人は幸せ なるが良き |
| 27 | 秋料理 食せば我も 大富豪 |
| 28 | 蔵人と 交はす一献 今年酒 |
| 29 | 今年酒 違ひのわかる 上戸下戸 |
| 30 | 日当りて 視界良好 山装ふ |
| 31 | 渓流に 浮きて清けき 紅葉かな |
| 32 | 錦秋の 六甲の山 たそがるる |
| 33 | いづ方も 薄き心や 暮の秋 |
| 34 | 暮の秋 民富官貧 素寒貧 |
| 35 | 身震ひを するがごとくに 銀杏散る |
| 2009年 冬 | |
| 1 | 柿の木の なほ散り残る 二三葉 |
| 2 | 煙立つ 見れば里曲の 落葉焚 |
| 3 | 羽のばす 暇もなくて 神の留守 |
| 4 | 溜池に 銀鷺一羽 鴨三羽 |
| 5 | 四五羽来て 気配一変 鴨の陣 |
| 6 | 小春日や そばに寄り来る ユリカモメ |
| 7 | 斑かに 冬毛生え初む 鴎かな |
| 8 | 水の面を 鎮めるごとく 浮寝鳥 |
| 9 | 水禽の 背負ひし影の 揺らがざる |
| 10 | 冬鴎立ちて運河に 水の紋 |
| 11 | 今昔の 禍福映して 冬運河 |
| 12 | 清盛の 墓捜す旅 暮易し |
| 13 | 冬夕焼 ふるさと遠く なりにける |
| 14 | 時雨るるや 摂津播磨の 国境 |
| 15 | 寒昴 平山郁夫 先師逝く |
| 16 | 寒北斗 老いて天命 あるを知る |
| 17 | 満身の 温まるまで 冬至の湯 |
| 18 | 古き家に 爺婆ふたり 年忘 |
| 19 | 実南天 難転ずれば 福となる |
| 20 | 緩やかに 時流れゆく 歳暮かな |