| 2010年 冬 | |
| 1 | 決着を つける年なり 明の春 |
| 2 | ささやかな 心願ひとつ 初詣 |
| 3 | 恙なく 家族の揃ふ 二日かな |
| 4 | 寒暁や 人それぞれの 運不運 |
| 5 | 俳子いま 冬地震なきが ごとく生く |
| 6 | 冬麗や 引目神事の 弓の音 |
| 7 | 千年家 抱きて眠る 丹生の山 |
| 8 | 夥し 過ぎしと言へど 木守柿 |
| 9 | 敦盛や 暁寒き 須磨の浦 |
| 10 | 人群れて 廉恥忘るる 寒暮かな |
| 11 | 貧国に 住みしと思ふ 霜夜かな |
| 12 | 迷ひ坂 下りゆく人に 冬の月 |
| 13 | 寒月や 偽りの町 白々と |
| 14 | ゐかんぜよ 龍馬気取りの 懐手 |
| 15 | いざ出陣 三廻りほども 着ぶくれて |
| 16 | 霧氷林 心澄みゆく 朝ぼらけ |
| 17 | 水洟や 並びて買ひし 中華饅 |
| 18 | 人はいさ 心も知らず 闇夜汁 |
| 19 | 白き糸 引くがごとくに 霙雨 |
| 20 | 日向ぼこ いにしへ人に 添ふごとく |
| 21 | またひとつ 色を添へたる 冬菫 |
| 22 | 日脚伸ぶ よせばよいのに 遠回り |
| 2010年 春 | |
| 1 | 厄明けの 願掛け地蔵 春立てり |
| 2 | 南の 柔らかき風 春兆す |
| 3 | どことなく 騒めきたちて 雪解なる |
| 4 | 梅ふふむ 景気上向く 兆しとも |
| 5 | 少しだけ 気取りませうか 春一番 |
| 6 | 山里も 一雨ごとに 春めける |
| 7 | 海上(うなかみ)の 春光眩しき 飛行場 |
| 8 | 春風に 髪なびかせてゆく 少女かな |
| 9 | 棘あれど 可愛い奴や 木瓜の花 |
| 10 | 我儘に 生くるも良きか 更紗木瓜 |
| 11 | 花韮や 星屑消ゆる 朝しじま |
| 12 | 花韮を 愛でておはやう ござります |
| 13 | 吾子連れて 外にも出でませ 桜草 |
| 14 | つちふるや 時代遅れの 発句ひとつ |
| 15 | 春寒や 責を負はざる 虚誕飛語 |
| 16 | 散りぬべき 時も知らねで 花万朶 |
| 17 | 競ひ馬 桜花の下を 駈け抜ける |
| 18 | 今生の 贅極まりて 花の寺 |
| 19 | 人絶えて 桜明かりの 夕間暮 |
| 20 | 夜桜や 有馬芸妓の 抜き衣紋 |
| 21 | 今まさに 輪廻再生 木の芽時 |
| 22 | 六甲や 少し遅れの 山桜 |
| 23 | どの道を 行くも夢路や 芝桜 |
| 24 | 春草の 香り満ちたる 野辺となる |
| 25 | 鉢ごとに 名札をつけて 菊の苗 |
| 26 | 大輪に 咲くはいづれか 菊の苗 |
| 27 | 俯きて 笑ふ麗人 糸繰草 |
| 28 | いらっしゃい どれも採りたて 春野菜 |
| 29 | 朝早き 卓に浅漬け 春野菜 |
| 30 | ひとりより ふたりが良きと 春嫁ぐ |
| 31 | 朧夜や うなじにかかる ほつれ髪 |
| 32 | 人の世の 情けも知らで 椿落つ |
| 33 | いふなれば 曲学阿世 葱坊主 |
| 34 | いにしへの 稀人(まれびと)眠る 春の墳 |
| 35 | 春霞 六ッ連山は 海に沿ひ |
| 36 | 風出でて 様相一変 牧の春 |
| 37 | 山藤や 三身山の 深き森 |
| 38 | わが身にも 老皮老臭 春憂ふ |
| 39 | ガンジーの 高貴と悲哀 春逝けり |
| 2010年 夏 | |
| 1 | 花を撒く 孫のドレスや 夏来たる |
| 2 | 柿若葉 水も空気も うまき里 |
| 3 | 入母屋の 古き山門 若葉映え |
| 4 | 若楓 そよめく風は 海手より |
| 5 | 夏めきて 光と影の 彩模様 |
| 6 | 著莪咲いて 雨に苔むす 道祖神 |
| 7 | 山里の 緑雨あがりて 鳥の声 |
| 8 | おいでませ 鈴蘭の花 咲く街へ |
| 9 | 祈りたし 五月の空の 澄むほどに |
| 10 | 紅朝焼 待てば海路の 日和あり |
| 11 | 出港の 汽笛三声 明易し |
| 12 | 青嵐 サンバ娘が 街を行く |
| 13 | 日当りて やさし昼咲 月見草 |
| 14 | 唇を 寄すも恥づかし 花薔薇 |
| 15 | 西洋の 香り豊かに ラベンダー |
| 16 | 医者要らず 薬要らずや ハーブ咲く |
| 17 | かりそめの 宿に住み古り 更衣 |
| 18 | そち行かば 滅びへの道 空木咲く |
| 19 | 花卯木 打座即刻の 俳諧師 |
| 20 | 海光の 墳墓に届く 日永かな |
| 21 | 錯誤また 錯誤重ねて 梅雨半ば |
| 22 | でで虫の ゆるりと下る 枝梢 |
| 23 | 遅々として でんでん虫の 歩をやめず |
| 24 | でで虫の 雨降らざれば 殻籠り |
| 25 | 手作りの 肴を少し 濃紫陽花 |
| 26 | 梅雨晴間 天保井水の 滾々と 於:東広島市・西條鶴醸造 |
| 27 | サッカーの 試合白熱 明易し W杯・日本VSデンマーク戦 |
| 28 | 黒南風や 海舟龍馬 ゆかりの地 於:神戸海軍操練所跡碑前 |
| 29 | 懐かしの カルチェラタンも みどり中 於:JR御茶ノ水駅 |
| 30 | 梅雨曇 ゆつくり伸びる スカイツリー 東京スカイツリーを望む |
| 31 | 短夜や 不夜城なれば なほのこと |
| 32 | 婿殿の 喜色満面 七夕婚 |
| 33 | 花嫁を 囲みて熱き 夏宴 |
| 34 | ふたりなら 険しき道も 花茨 |
| 35 | 海の日や 汽笛一斉 吹鳴す |
| 36 | 海に出て 空のあなたに 夏燕 |
| 37 | 風を得て 小波越えゆく ヨットかな |
| 38 | 滴りて 水琴窟の 高き音 |
| 39 | 滴りて 裏六甲の 空蒼し |
| 40 | 雲の峰 湯山が道の 空狭し |
| 41 | 政治家の 口先二寸 御器嚙り |
| 42 | 片蔭に 入リきらざる 影ひとつ |
| 43 | 夏座敷 座して眺むる 庭の景 |
| 44 | 胡坐より ごろ寝が似合ふ 夏座敷 |
| 45 | 天国に 近きあはひに 大昼寝 |
| 46 | 女房の 手抜き息抜き 冷奴 |
| 47 | 盛夏にも 恙無きかと 便り来る |
| 48 | 布引や 風吹きやめば 滝の音 |
| 49 | 六甲の 裏山暮れて 風の涼 |
| 50 | 憮然たる 思い募りて 夏果てり |
| 2010年 秋 | |
| 1 | 剣よりも 強きペンあり 今朝の秋 |
| 2 | 蜩や 朝な夕なに 鳴きにける |
| 3 | 蜩の 鳴きて夜が明け 日の暮るる |