俳子の守破離俳句
     

   木霊(二十句)   戯画(二十句)   扇都(三十句)
   人籟(二十句)   緑陰(二十句)   死夢(二十句)
   鎮魂(二十句)   炎帝(二十句)   蛇惑(三十句)
   寧楽(三十句)
    
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        蛇  惑 (三十句)             *
                  
            
    穴出づる 蛇痩身に 白き膜 
    恥づかしき 裸体さらせり 春の蛇
                   
             
    蝶迅し 里山深山 青み空
    一草も 揺がさざれば 夏の蛇
         
              
                      う ま い
    緑陰や 母ふところに 熟睡の子
    木陰濃し 蝮出でたる 沢辺道
         
                        
                 みぎは
    蛇渡る 水尾は汀に 届かざる
    一瞬や 撓ひ飛びたる 家の蛇
       
         
    卵熟る 子蛇の歯牙も 育つらむ
    くの字とも への字とも見え 棒振虫
        
              
    青大将 仏の前も はばからず
    いるだけの 鼠捕へて 寺の蛇
            
               
    蚊を打つや 木魚叩きし 同じ掌で
    女郎蜘蛛 虫捕ふるも 逆しまに
            
              
    丑の日や 鰻の命 たまはりて
              は ぶ
    むくむ手で 飯匙倩を手玉に 軟膏売
          
            
    壜中の 蝮あはれや 直立す
    蝮酒 あふりて我も 獣めき
              
                  
    空飛ぶを 夢見しごとく 蝉の殻
           うらうへ
    蛇衣の 裏表なるは 尻尾まで
         
               
    青光る 蛇の腹中 ふたつ瘤  
                        や ま か が し
    鳶の餌や 空にあらがふ 赤楝蛇
           
             
    油照 またぎて通る 蛇むくろ
                      はね
    蟻の列 まなかを通る 翅かけら
            
                
    円座解き 全き蛇と なりにけり
    野花にも 永くは寄らず 秋の蝶
           
              
    あなまどひ
    穴惑 人の影にも たじろがず
    残る虫 雨降る闇に 鳴きにけり
                
                     
    木の葉散る 耳朶にかそけき 雨の音
    凩や 梢に残る 二三葉
               
                   (原句にはルビはふられていません)