扇   都  (三十句)               *
                     
         
      春時雨 襟立てて行く 異人街 (神戸北野町)
    
      楊貴妃の まとふは重き 春衣 (神戸南京町)
   
      網引きの いかなご撥ねて 桜色 (明石海峡大橋)
    
      ひんがしの 春まゆづきの 朝しじま (裏六甲)
    
      残る香の あるかなきかに 梅のひと (須磨綱敷天満宮)
                   
      夕桜 袂に隠す 恋みくじ (生田神社)
    
      お大師へ 智慧の道行く 春日傘 (須磨寺)
     
      
      清盛が 夢の都や 青葉騒 (兵庫区雪御所町)
      
      緑陰や 臍下丹田 息深し (布引の滝)
    
      薔薇熟れて 王侯貴族の 名を冠す (須磨離宮公園)
     
      水槽の 青紫銀鱗 魚涼し (須磨海浜水族園)
     
      夏燕 風まで青き 須磨の浦 (須磨浦公園)
   
      磯の辺に 残る足跡 夏終る (須磨海岸)
    
    
      きら星も 月も出でませ 長寿村 (しあわせの村)
                  
      星芒の かすみて月の 輝ける (須磨現光寺)
    
      遊覧船 ふれんばかりに 秋燕 (神戸沖)
      
      椎の実を 踏むほかはなき 山路かな (六甲山)
    
      会へばまた 和悦相楽 菊日和 (相楽園)
    
      秋闌くる 老ジャズメンの 息遣ひ (神戸ジャズストリート)         
     
      残る虫 雨降る闇に 鳴きにけり (兵庫区・能福寺)
               
      秋冷や 天に星屑 地に灯り (布引ハーブ園)
            
      
      時雨るるや 摂津播磨の 国境 (須磨境川)
    
      冬燈 肩すぼめゆく 地震の街 (神戸旧居留地)
    
      行く年や みなと神戸の 連れ霧笛 (神戸港)
     
      もののふの 栄華盛衰 雪深し (兵庫運河)
       
      湯煙の あがりて雪の 青明かり (有馬温泉)
              
      寒風や 一麹ニもと 三造り (灘の酒蔵)
     
      冬木立 光輝は枝を 揺るがさず (神戸森林植物園)
          
      冬残照 明石が橋の 灯のともる (神戸空港)
     
      日溜りに 並ぶ埴輪や 春隣 (五色塚古墳)

    俳子の守破離俳句
       

  扇都(三十句)   人籟(二十句)   緑陰(二十句)
  死夢(二十句)   鎮魂(二十句)   炎帝(二十句)
  蛇惑(三十句)   寧楽(三十句)
    
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