裸 木 |
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2022年 冬 ( 4 ) * | |
121 | 巻き癖の 髪余らせて 冬帽子 |
122 | ナフタリン匂ひて 祖父の冬帽子 |
123 | 冬の日の ひとりの時の 古時計 |
124 | はよ行かな 冬の日差しの あるうちに |
125 | 暮早し 夕づつ出づる ビル谷間 |
126 | 短日の 近道なぜか 回り道 |
127 | 物好きの 時間貧乏 日短 |
128 | 字足らずの 難句がひとつ 日短 |
129 | 短日に 静かに狂ふ 古時計 |
130 | 山眠る 森の深きに 木も眠り |
131 | 山眠る中や 木を伐る音響く |
132 | わが庭に 向くが正面 山眠る 今は廃れてしまった、わが生家には、池泉回遊式の庭があった。 家の近くには、黄金山という山があって、その山は高からず 低からず、また、遠からず近からずの絶妙の位置にあって、 翼を広げた鳥のように、優雅に庭を包みこんでいた。 庭の借景として申し分のない、この山と一体化した庭の景を、 幼いころから見て育った私は、いつのころからか、 それを私の美意識の中枢にすえて、 ものの位を決める基準のひとつにするようになっていた。 「この人は、美的に見て、この庭の景に勝るか、劣るか」という具合に…。 そして、その結果、私はすっかり人間嫌いになってしまった。 |
133 | 薄色に 故山は遠く 眠りゐて 薄色は薄い紫色 (昔は色といえば紫のことだった) |
134 | 日を沈め 月を浮かべて 山眠る |
135 | 冬凪ぎて 闇に眠らぬ 波の音 |
136 | 枯木にも 枝の賑はひ 朝日さす |
137 | 裸木や 空近きほど 枝細く |
138 | 裸木の 影に奥行 なかりけり |
139 | 裸木の 根元やはらか 日溜まりて |
140 | 川堰の 冬木が中の 死木白し |
141 | 青鈍の 男がひとり 冬木立 |
142 | 枯木立 闇からまりて 闇に消ゆ |
143 | 枯木星 慧玄が這裏に 生死無し |
144 | 枯芙蓉 涙はすぐに 涸れ果つる |
145 | 水草枯る 水になじみて 抗はず |
146 | 蘆枯れて 水の流れも 細かりし |
147 | 枯蓮の 風の白きが 止まりかね |
148 | 枯はちす 退路断たれし 兵のごと |
149 | 枯蓮や かくも敗れし ものあらず |
150 | 敗者にも 美学はありぬ 枯はちす |
151 | 枯はちす 死地をくぐりし やも知れず |
152 | 死ぬほどの 恋など知らず 枯蓮に |
153 | 枯葎 安住の地は 見つからず |
154 | 落葉朽つ 俳子死すとも 句は遺る |
155 | 荒星の 吹き残されて 天の座に |
156 | 戦国の 武将いづこや 冬の月 花隈城址 |
157 | 冬空へ 鈴懸の実の 揺れやまず |
158 | 何よりも 独りが好きで 枯野好き |
159 | 荒野行く ここは枯野が 零番地 |
160 | 国境を ひとり枯野に 捨てにゆく |
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