蝌   蚪   *

        春…産卵や 蛙がつむぐ 命の緒
          蝌蚪の紐 えにしひとつに 連なりて

          連なりて 黒玉動く 蝌蚪の紐
          太古より ぬるぬるぬると 蝌蚪の紐
          蝌蚪の紐 ひけば古池 どろ濁り

          零コンマ 一秒の間や 蝌蚪生まる
          生きかはり 生きつぎもして 蝌蚪生まる
          生くは死し 死すは遺して 蝌蚪生まる

          生きかはり 死にかはりして 蝌蚪泳ぐ
          夢一炊 一期末代 蝌蚪の春

          古池や 億千万の 蝌蚪連鎖
          蝌蚪連鎖 いのちに限り あればこそ


          水だまり あれば即ち 蝌蚪だまり
          捨畑の 溜まりに濁る 蝌蚪の水

          移り世や 捨田溜りに 蝌蚪育つ
          沼尻や 濁りて暗き 蝌蚪の水

          水痩せて 蝌蚪ゐるだけの ビオトープ
          水古りて 蝌蚪安住の ビオトープ

          尾を振りて わづかに進む 蝌蚪ひとつ
          蝌蚪泳ぐ 尻尾の先の 水濁る

          黄ばみたる 腹見せ蝌蚪の 裏返る
          乱れては また整然と 蝌蚪の列

          足音に乱れて 蝌蚪の陣破る
          列なすも 音に乱るる 蝌蚪の陣
          水音に 驚天動池 蝌蚪の陣

          幾たびも 離合集散 蝌蚪の陣
          一水に 一離一合 蝌蚪の陣

          蝌蚪の陣 乱るるときの 池無音
          落下急 五線譜上の 蝌蚪の陣

          蝌蚪の乱 半濁音の 声あげて
          唐突に 水の濁るる 蝌蚪の乱

          蝌蚪泳ぐ 浮きつ沈みつ 漂ひつ
          池暗し 梵字となりて 蝌蚪泳ぐ

          にごり絵や 尻尾の揺るる 蝌蚪の国
          蝌蚪沈む 底なし沼の 混沌へ

          やはらかき 命ひしめく 蝌蚪の池
          蝌蚪の群れ 入れて静かや 水の息

          濁りてや 水やはらかき 蝌蚪の池
          まるがほの おたまじゃくしが あつぷつぷー


          方丈の 池は広きか 蝌蚪の国
          網入れて 捕るるは蝌蚪の 五六匹

          古池や 蝌蚪が尾をふる 脚のばす
          古池や 尻尾千切るる 蝌蚪ひとつ

          古池や 蝌蚪形変の 騒なして
          脚出でて 尻尾の消ゆる 蝌蚪の変

          脚あれば 陸の都や 蝌蚪の変
          手脚なき 蝌蚪が蛙に ならうとは

          蝌蚪の尾や 吾にも残りし 尾てい骨
          尾の失せて 蝌蚪は蛙に 吾は人に

          蛙生る 命あまさず 生きつぎて
          蛙生る 鵯越の 七不思議   俳子

          ニホンアカガエルの卵塊    神戸市立森林植物園 2016.3.20

         蝌蚪(二ホンアカガエル)    修法ヶ原池 2022.4.30

             蝌蚪の陣    修法ヶ原池 2016.4.24


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