秋  深  し   *

        秋…六甲の 深山奥山 秋深し
          秋深し 木末あまねく 色づきて
          秋深し 森の奥より 鳥のこゑ

          秋闌けて 裏六甲の 夕かげり
          秋深し 葉音にまじる 風の音

          歩をとめて秋 ふりむきて秋深し
          ふりむけば 深秋の影 濃かりけり

          灯をともせ 闇の秋寂ぶ 夜なれば
          秋深し 灯りともせば 影ひとつ

          風立ちて 水波は立たず 秋闌くる
          君恋へば 影に色あり 秋闌くる
          秋闌けて 日暮れの雨の さめざめと

          秋闌けて 一雨一度 一変化
          秋闌けて 禽獣虫魚 草木花

          秋闌けて 森羅万象 人十色
          天に星 地には海山 秋深し
          秋深し 闇がなければ 星もなく


          歌姫の 柳眉愁声 秋深し
          秋闌くる 老ジャズメンの 息遣ひ

          深秋の しらべは深し 須磨が琵琶
          深秋に 七宝焼の 耳飾り

          赤錆びて 朽ちし彫刻 秋深し
          諳んずる 学庸論孟 秋深し

          深秋や タルトタタンを 召し上がれ
          秋の夜 タルトタタンの 香りして

          秋深し 醤油一滴 千の味
          もてなしの 皿いろいろに 秋料理
          秋闌けて 古木ワインの 深香り

          秋深し 息をするにも 五七五
          秋深し 俳句にならぬ ものはなし
          深秋や かくも短き 詩も万に


          月太り 月また細り 暮の秋
          風の音の あるかなきかに 暮の秋

          ビル街の 底ひにひとり 暮の秋
          いづ方も 薄き心や 暮の秋

          一病を もちて長らふ 秋の果
          草むすも 水漬くも定め 終の秋

          コキュコキと 首鳴るこけし 秋惜しむ
          秋惜しむ ワイングラスを 傾けて


          独生独死 独去独来 秋深し
          秋深し 我もひとりの 異邦人
          つまらなき 世とは思はじ 秋深し

          耳奥に しむる風音 冬近し
          深秋や 声なきを聞き 風を見る

          一些事に 一喜一憂 秋行けり
          老いらくや 秋去りゆくに 追ひつけず

          行く秋に 時代遅れの 男唄
          行く秋や いとしき名をば 風に書く

          行く秋や 名のみが残る 平野殿 (兵庫区平野・堂仏)
          逝く秋や 過ぎゆくものは 影をひき
          遠きより 入相の鐘 秋逝けり

          秋逝くを かたみに思ふ 夕まぐれ
          行く秋に 深みゆくもの みな無音

          行く秋に 両手でなづる 顎の髭
          ドア開く 鍵はいづこや 秋終る   俳子


               しあわせの村

        しあわせの村の彫像 「詩人一生を詩う」

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