葡   萄  *

          秋…芳醇の 香り満ちたる 葡萄園
            黒葡萄 棚下重く 垂れさがる

            片肺を もぎとるやうに 葡萄もぐ
            偉丈夫も 猫背になりて 葡萄もぐ

            黒葡萄 水に浸せば しろがねに
            洗ひ水 くぐらすだけの 黒葡萄

            一粒の 葡萄に伸ぶる 白き指
            白指(しらゆび)に 攫はれゆきし 黒葡萄

            一粒に ひとつの幸や 葡萄食む
            念入りに 葡萄の粒を ひとつづつ
            葡萄食む くちびる赤く ふくよかに

            キスしてよ 葡萄の粒を 吸うやうに
            口吸へば 葡萄の味の ほのかにて

            コロナ禍や 肺の葡萄が 腐るてふ
            種なしは 葡萄の無念 人のエゴ    俳子





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