曼 珠 沙 華  *

          秋…彼岸花 地蔵さまより 畦づたひ
            彼岸花 曲りて細き 在所道
            彼岸花 里に段なす 畦の列

            彼岸花 村人こもる 山城に
            曼殊沙華 丹生の山城 攻めたてて

            そこここに 烽火狼燧 曼珠沙華
            点々と 飛び火するかに 曼殊沙華

            落城の 火焔のごとく 曼殊沙華
            落城の秋や 破楼の空無辺

            結界に 地蔵二体や 曼殊沙華
            死人花 稚児ヶ墓への 細き道

            曼珠沙華 蕊ふるはせて 泣くといふ
            曼殊沙華 死人山にぞ 月落つる

            死人花 藍那に卒塔婆 五輪塔
            幽霊花 夕日落つれば 穢土辺土


            曼珠沙華 いきなをみなに だまされて
            狐花 この世あの世の 綾変化

            曼珠沙華 蘂が隙間の 死者生者
            彼岸花 子攫ひ鬼の 隠れ家に

            逝くもあり 生まるもありて 秋彼岸
            萌えいでて 彼岸此岸の 彼岸花

            冥途にも 咲く花あらば 曼珠沙華
            遠き世の あだ花めくや 曼珠沙華

            結界を 越えてぞ赤き 曼珠沙華
            彼岸花 誰もが帰る 闇深し


            幽界に 通ずるしるべ 曼珠沙華
            ここよりは 異界霊界 曼珠沙華
            曼珠沙華 これより先は 黄泉の域

            死人花 黄泉比良坂 奈落坂
            折り取りて 逆さに吊るせ 死人花

            他の色 を拒めば白に 彼岸花
            花びらの うちは虚の闇 曼珠沙華


            天に咲く 花やも知れず 曼珠沙華
            魂は 赤やも知れず 彼岸花

            諦念は 悟りにも似て 曼珠沙華
            曼珠沙華 死生一如と 思ふべし

            み仏に たむけて白き 曼珠沙華
            曼珠沙華 ああ曼珠沙華 曼珠沙華


            空は紺 地には火の色 曼殊沙華
            地の霊の もえたつごとく 曼珠沙華
            天を指す 蘂の曲線 曼珠沙華

            彼岸花 老残さらす 身ほとりに
            曼珠沙華 手の鳴る方に 鬼がゐる

            花さびし 群るるほかなき 曼珠沙華
            咲き群れて どれも淋しや 曼殊沙華
            死人花 なれば一花も 実をなせず

            萎えてなほ 蘂がうるさき 曼珠沙華
            南無八幡 幽霊花の 崩れ落つ


            曼珠沙華 燃え尽くるごと 頽れて
            燃え尽きて 火屑めく芯 曼珠沙華

            散りて知る 天蓋花の 造形美
            彼岸花枯れて 球根太りそむ

            曼珠沙華 失せたる畦の 高からず
            曼珠沙華 花開きても 萎れても   俳子





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