ナガサキ忌 *

        秋…ヒロシマ忌 過ぐればすぐに ナガサキ忌
          天ぞ落つ 八月六日 九日に

          浦上忌 火傷裂衣の 使徒が這ふ
          夏蝶も 秋舞ふ蝶も 粉々に

          八月に爆す マリアの像を抱き
          八月のマリアや 妹と共に死す

          街熔けて 八月の空 底なしに
          八月の 瓦礫の中に ひざまづく

          神の地の 瓦礫累々 秋の蠅
          秋の蠅 木切れ二本の 十字架に

          日の裏も 眩しからむに ナガサキ忌
          ナガサキ忌 天から災ひ 墜ちてくる

          浦上忌 神もつまづく 神の庭
          浦上忌 神も燃ゆるを まぬがれず

          爆忌来る 神すら黙す 聖廃墟
          浦上忌 聖母の胸は 安けしか

          爆忌来る 血の滲み残る クルス抱き
          ケロイドの 胸にロザリオ 汗かかず 季:夏
          浦上忌 マリアの像は 首傾げ

          ナガサキ忌 妻子爆死の 証明書 松尾あつゆき『原爆句抄』
          ナガサキ忌 紙切れのみが 遺りゐて

          死児背負ふ 少年の黙 ナガサキ忌
          八月の傷や 瘡蓋とれもせず

          露草や 骨を拾ひし 手で祈る
          八月に 爛れし神が 祈るとや

          ナガサキ忌 生き存らふは 見苦しと
          八月や 問はねど語る 被爆譚

          八月の 白美しき 爆心地
          天を指し 地を平らかに ナガサキ忌

          心して 花に水やる 秋の朝
          人を恕し 罪を裁かず ナガサキ忌

          罪人の 罪をも背負ふ ナガサキ忌
          祈ること 重ねてめげず ナガサキ忌

          浦上忌 ルルドの水を 傷口に
          浦上忌 ルルドの水に 癒されて

          浦上忌 母なき子にも 聖母像
          被爆せし マリアの祈り 浦上忌

          浦上忌 むごき被爆と 殉教と
          八月の 光集めて 祈るひと

          雄弁に まさる沈黙 ナガサキ忌
          八月の 折り皺深き 記憶かな

          忘るるな 八月の空 炎えしこと
          忘るるな 破鏡に映る 八月を

          八月や 失ふものは なにもなく
          ナガサキ忌 天に届けと 鐘鳴らす

          八月や ああナガサキの 鐘は鳴る   俳子


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