冬 の 月  *

       冬…日にこがね 月に銀白 枯尾花
         冬月に 甍つやめく しろがねに

         須磨隅の 風に細りし 冬の月
         冬三日月 骨組み見ゆる 捨小舟
         冬三日月 暁闇いまだ 明けざりて

         冬空に 白くも薄き 昼の月
         冬月や 竜骨折れし 老朽舟

         孤高とは 淋しきものよ 冬の月
         冬月を 肴にひとり 般若湯

         救急車 冬の月下を 音もなく
         冬月や 町をさまよふ 影ひとつ
         冬月や 死より生まるる 生もあり

         戦国の 武将いづこや 冬の月 (花隈城址)
         冬月や 影はさびしき ものに添ふ

         足りてなほ 欠くるものあり 寒満月
         大寒の ひんがしの空 月細し
         欠けてなほ 細りゆくかな 寒三日月

         寒三日月 竹蝋燭に 宿る魂 (中央区・東遊園地)
         寒月や 身むちに残る 震度七

         月氷る 楼なき城の 影蒼む (花隈城址)
         寒月下 白き筋なす 遺址の道
         天守なき城や 寒月のみを載せ

         敗兵の 落ちゆく闇へ 月冴ゆる
         寒月へ謡ふ 声突き刺さるまで

         城跡に 寒満月の 光かげ
         寒月は 遠くにありて すさまじき

         寒月下 城山城裏 大龍寺 (大龍寺)
         言の葉は 野に捨つべきか 月冴ゆる

         寒月や 空に影立つ 塔ひとつ (奈良・薬師寺)
         寒月の 色を映して 甍波

         寒満月 益荒男ひとり 酒を呑む (兵庫区・平野)
         寒月や 杉玉青き 酒蔵に

         寒月は 色をこぼさず 湯の匂ひ (有馬温泉)
         闇青く 月影白き 寒の里 (北区・藍那)

         寒月に 海は吠ゆるか 波荒し
         寒月光 波一枚の ざやめきに

         寒月や 里の底ひに 水一条
         極北の 星は動かず 月凍つる

         寒月や 影なす犬の 遠吠へて
         一犬の 虚に吠えぬれば 寒月夜

         寒月光 百万年の 孤独より
         寒月の ひかり震えて 我を刺す

         真夜しじま 寒満月の ひび割れて
         寒満月 割れて飛び散る 細微光

         砕け散る 寒満月の 大音響
         寒月下 無明の炎 燃えつきぬ

         寒月に 細りてさびし 影法師
         寒月光 闇透き通る まで歩く
         寒月光 いのちは光 あるを恋ふ

         寒満月 鏡捨つれば 夜叉が棲む
         寒月光 鼻をつまめば 魔女になる

         寒月下 胸に透きたる 骨に色
         月白し 寒夜のひかり 放ちつつ

         寒月下 獣のやうに 咆哮す
         老狼の 遠吠え悲し 寒月夜

         邪鬼を斬れ 寒三日月の 刃もて
         寒三日月 銀のやいばが 空を斬る

         寒三日月 人は斬れざる 逆刃刀
         物の怪を 鎮むる杜や 寒三日月

         寒三日月 深き闇より 光堂
         寒月光 影引きながら 男来る

         白々と マイナス五度の 寒月光
         寒月下 君はいづこか なに思ふ

         山の端に 寒月細く 吹き残る
         夜々ごとに 細る寒月 かたもなし     俳子


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