寒     し  *

          冬…闇に向く 燈火ひとつ 帰路寒し
            薄暗き 三和土にゐつく 寒さかな

            大寒の ひんがしの空 月細し
            ねんねこよ 親のゐぬ子は 寒かろう

            寒朝や ミルクの膜の 深き皺
            寒厨や 魚の死体を 横たえて

            寒中の 手水の水の 尖るがに
            寒き日や 両手に受くる 水尖る

            水寒し 涸れて嵩なき 天井川
            白きもの 集めて寒き 田の面かな

            老寒し 多重配線 コンセント
            パソコンの オフの画面の 奈落寒

            老い人の 手先冷たし 気は寒し
            老骨の 髄までしむる 寒さかな
            寒き日や きしきしぎしと 骨がなる

            身ひとつや 死して寒夜の 闇遺す
            いざ行かむ 姥捨山の 寒き洞

            墓山に 鳴き声寒き 鴉かな
            友垣の ひとり抜けたる 寒さかな

            鄧王の 臍を噛みたる 寒さかな 『春秋左氏伝』より
            寒中や ヒートテックの 肌触り

            耳寒し ばれざる嘘と いふはなく
            口寒し 舌禍小次郎 敗れたり


            寒中に 湯気出るほどな 猿団子
            寒天へ アンパンマンの アンパンチ

            寒天に 屹立不動 新た堰
            寒天に 北極星の 不動なる

            酷寒の 闇にも鳥は 目を閉ぢず
            絶巓を 越えて寒風 天外へ    俳子


     

     前頁(冬滝)へ  この頁のTOPへ  次頁(冬の鯉)
 
  575 俳子ワールド
 俳子の俳句横丁
 俳子のインターネット歳時記
        INDEX版
 神戸観光名所歳時記
 須磨・句碑めぐりの旅
 俳子の守破離俳句
 俳子の独断状
    ホームへ

 俳子のインターネット歳時記 冬


 俳子のインターネット歳時記 写俳版