寒 し * 冬…闇に向く 燈火ひとつ 帰路寒し 寒中や ヒートテックの 肌触り 薄暗き 三和土にゐつく 寒さかな ねんねこよ 親のゐぬ子は 寒かろう 大寒の ひんがしの空 月細し 寒暁の 光一条 地に遠し 寒朝や ミルクの膜の 深き皺 寒厨や 魚の死体を 横たえて 寒中の 手水の水の 尖るがに 寒き日や 両手に受くる 水尖る 水寒し 涸れて嵩なき 天井川 白きもの 集めて寒き 田の面かな 老寒し 多重配線 コンセント パソコンの オフの画面の 奈落寒 老い人の 手先冷たし 気は寒し 老骨の 髄までしむる 寒さかな 籠り世の 寒を小分けに パーティション スタンドの ひかり寒きを 封筒へ 競り寒し 開きしままの 魚の口 寒き日や きしきしぎしと 骨がなる 寒晴へ 発する声や かへりこず 古傷の チリチリ痛む 寒さかな 神よりの お告げありしか 寒の日矢 墳寒し 草はびこるを 許さざる 身ひとつや 死して寒夜の 闇遺す いざ行かむ 姥捨山の 寒き洞 墓山に 鳴き声寒き 鴉かな 寒山の 孤影を鳥の 影よぎる 鄧王の 臍を噛みたる 寒さかな 『春秋左氏伝』より 寒の塵はらひて 誇り高き人 耳飢えて 深夜ラヂオの 音寒し 耳寒し ばれざる嘘と いふはなく 口寒し 舌禍小次郎 敗れたり 友垣の ひとり抜けたる 寒さかな 声寒し 不織布越しに 物言へば 寒中に 湯気出るほどな 猿団子 一抜けて 鬼には寒し かくれんぼ 寒中や 缶ぽつくりが カンコロロ 寒天へ アンパンマンの アンパンチ 寒天に 屹立不動 新た堰 寒天に 北極星の 不動なる 酷寒の 闇にも鳥は 目を閉ぢず 絶巓を 越えて寒風 天外へ 六甲の 寒のゆるぶは 湯山より 寒ゆるぶ 身中の虫 動きそむ 俳子 |
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