焚   火  *

        冬…初焚火 煙ばかりを 燻らせて
          煙立つ 見れば里曲の 落葉焚

          煙のみ 見えて昼間の 落葉焚
          落葉焚く 空には煙 地には灰

          焚火人 小さき焔に 手をかざし
          顔翳り 顔また浮かぶ 焚火びと

          背に暗き 翳を背負ひて 焚火びと
          面熱く 背中の冷ゆる 焚火びと
          尻向けて 尻持ち上げて 焚火びと


          夕焚火 誰いふとなく 集ひきて
          ひとり来て またひとり去る 夕焚火

          焚火燃ゆ 炎離るる 金砂子
          君が瞳の 火の色動く 夕焚火

          夕たきび 浜流木の 燃えしぶる
          燃えさしの 生木泡ふく 浜焚火
          海鳴りの 闇に爆ぜたる 浜焚火

          海闇に 炎遊べり 浜焚火
          浜焚火 して火の色 水の色

          浜風や 焚火痩せたり 太りたり
          磯びとの 笑へば焚火 燃えあがる

          海に貌 火に尻むけて 浜焚火
          尻むけて 大川端の 焚火かな

          夜焚火の 火が火をよんで 炎立つ
          夜焚火や 修羅の炎が 空焦がす
          煩悩も くべて焼きたし 大焚火

          恋や今 いのち火燃やす 榾となる
          夜焚火を 跳びこえて来よ わが胸に

          夜焚火に 当るも去るも 定めなく
          誰よりも 煙臭強き 焚火守

          夜焚火や 見えぬ煙が 鼻をつく
          夜焚火や 言の葉焦ぐる 臭ひして

          焚火より 夜空を焦がす 黒気流
          夜焚火や しばれし躰 あたたむる


          赤と黄と黒と 焚火の万紅と
          火を焚くや 万古の記憶 よみがへる

          火を使ふ 知恵得てよりの 大焚火
          原人の 洞に残りし 焚火跡
          底知れぬ 闇の記憶や 洞焚火

          縄文の 煙り全開 夕焚火
          炎より 煙り豊かな 焚火かな

          夕たきび 縄文土器の 水たぎる
          夕たきび 強き香放つ 五穀粥

          夜焚火や 縄文人の 貌をして
          焚火の炎 ホモ・サピエンス なる我に
          夜焚火や 炎に透くる アドラヌス

          大焚火 天上天下を 燻らせて
          火の貌の なまめく夜の 焚火かな


          火の消ゆる 際はさびしも 榾をつぐ
          榾たして 焚火ぼてりの 頬さする

          焚火榾 くづれて火の粉 舞ひあがる
          夜焚火や 心に燃ゆる 炎は失せて

          人まばら 榾火衰ふ ころなれば
          焚火消ゆ 熱き思ひの 萎むかに

          焚火果つ 太き丸太も 灰と化し
          焚火果て頬に残りし火照りかな


          焚火爆ぜ 矢弓の話 盛り上がる (六条八幡宮)
          冬麗や 引目神事の 弓の音

          縄電車 焚火の駅に 列をとく
          火が紙を 腐食する冬 手紙焼く

          幽闇に 焚火ほのほの 劫火めく
          夢ひと夜 焚火の舌が 闇焦がす

          人去りて 火種尽きたる 焚火跡
          大方は 灰となりたる 焚火跡
          火うたげの 名残りあるかに 焚火跡   俳子



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